- Back to Home »
- Latest Topic , Record Label »
- Merge RecordsのDIYストーリー from Billboard Mag
Posted by : A kind of Lo-Fi
Jul 3, 2013
BillboardがMerge RecorsとSuperchunkの(もうすぐ)25年になろうとする歴史を振り返るコラムを掲載しています。ビルボードのDIY特集の中のワンパートのようですが、これがわりとおもしろかったので紹介します。元記事はこちら。
記事は、マック(SuperchunkのVo.件レーベルオーナー)とローラ(Superchunkのベーシスト件レーベルオーナー、現在は耳の治療のためにバンド活動から離れている)へのインタビューを織り交ぜながら、歴史を振り返っていくものです。
冒頭、ライターは彼らを称して「彼らは、インディー音楽業界という先のまったくわからない不安定な場所の先端で、そこに光を探しててきた」と始まっています。
時は1989年、Superchunkの7'を売るために、ローラのアパートでDIYにレコードをプレスし始めたことでMerge Recordsがスタートします。若き日の彼らは、つぎのレコードのために今日のレコードを売る、いわゆる自転車操業の日々を送ったそうです。
インタビュアーはここで、彼らのリレーションシップ(マックとローラは当時付き合っていたが、このころ別れている)につっこみを入れ、暗に「ふつうバンド内で別れたらレーベルとかバンドってやめませんか?」と聞いています。
それに対し彼らは、「バンドにはバンドの、レーベルにはレーベルのそれぞれの価値がすでにあった。そして、僕らはそれがわからないほど直情的な性格ではなかったんだ」と答えています。
サーストンとキムも同じ気持ちだったのだろうか、ある瞬間までは、、、などと余計なことを考えながら、このレーベル初期に、彼らがバンドとしてもレーベルとしても希望とビジョンを持って活動をしていたことがうかがえる、含蓄のあるひと言だと思いました。
その後、時代はCDが主流になり、同時にMagnetic FieldsやNeutral Milk Hotelがヒット。レーベルは次第に大きくなり、自社ビルを持つほどに。Mergeの初めての大ヒットは、1999年のMagnetic Fieldsの69 Love Songsだそうです。(69では個人的には2枚目が好き。ちなみに、その前年のNMHのIn the Aeroplane Over the Seaもヒット作ですが。)
記事中は、Touch and Goにディストリビューションを委託していた話、Mergeの屋台骨を支える、デキる男、GMのSpott氏の話など、いろいろビジネス面の話も多くなっています。詳細はぜひビルボードの記事にて。
ちなみに、2013年6月16日づけのアメリカのレコード市場シェアの話があります。それによると、インディーレコードレーベルでもっともシェアが大きいのは、PhoenixやMomford & Sonsを要するGlassnote Recordsで1.96%。対してMergeは0.19%でSub Popは0.15%だとのこと。短期のチャートのようなので、そのタイミングのリリース数で上下するのでしょうが(最近は、Mikal, Bible, Eleanorなど、リリースが多かった)、Sub Popを上回っているのはすごいと言えるでしょう。
ですが、この数字の小ささからは、全市場規模のいいところ5%程度のパイをインディーレコードレーベルが奪い合っているのが推察できます。経営に関しては、インディー大国アメリカといえど、やはりリスクが付きまとっているようです。日本とはユーザー数の分母が違うので、数字のリアルさ、深刻さはちょっと測りかねる気がしますが。
とまれ、思うことは、自分は全音楽リリースの5%でひしめく数多くの作品を聴きまくることにのみ時間を注いでおり(それでもすべては聴けていない)、残りの95%のヒットチャート音楽はほぼ無視を決め込んでいるのだから、これはこれで、音楽が好きです、などと言っていていいのやら悪いのやら、頭が痛い話ではあると思いました。
話が大きくそれました。。。
そして2004年、Arcade Fireの「Funeral」が世界中で話題を呼び、レーベルは一気に軌道に乗ります。まさか、後にグラミーやビルボードチャートのトップを獲るアーティストがMergeから出るとは、このときは誰も予想はしていなかったでしょう。
もちろん、ほかにも多数の素晴らしいアーティストがMergeには在籍しています。
She & Him、Wild Flags、The Mountain Goats、そしてSpoonも。
Spoonのフロントマン、ブリット・ダニエルは、「誰も僕らに声をかけてくれなかったとき、Mergeだけが僕らとやりたいと言ってくれた。そのことだけが大事だ。」と言っています。
この話から伺えるのが、Mergeの魅力は、所属アーティストのバラエティの豊かさに加え、売れている、いないに関わらず、お互いの音楽をリスペクトしあっているところだと感じます。それがリリース作品や、レーベルの雰囲気からも伝わってきますね。
この後、インタビューは、どうやって新人との契約を決めるのか、というあたりにも及んでいます。サンプル盤をスタッフのみならず、信頼できる知人にまで聴かせて、感想を求め、誰か一人でも音が刺さる人がいれば、そこから考えて結論を出すそうです。こうして昨年から、HospitalityやMikal Cronin、SugarのBob Mouldまで、新たな契約をMergeと結んだアーティストたちがレコードを出しています。ここで少し動画を貼っておきます。
Mergeのさらなる歴史は、この本「Our Noise The Story of Merge Records」が詳しいでしょう。読みたいと思いながらまだ読めていないので、これは近いうちに手に入れたいと思います。
最後に、マックは来る8月発売の新作「I Hate Music」についてこう述べています。
「新作は、前作のMajesty Shreddingとはかなり違うものになる。前作は、音楽とノスタルジアについて書いた曲が多かったけど、今回はもう少し慎重にならないといけないような場所から得たものを扱っているんだ。もしテーマが老いることとかだったら、みんな敬遠するだろうから、ちょっとそうは言いたくないんだけどね……。ほかにも、喪失や死、友人や、生活の中にの音楽の役割いついてとかね。」
以前のニュースなどによれば、テーマはさまざまなものに対する愛とのことですが、かなり意味深な発言ですね。
楽曲軍的にもどんな構成になるのかいまから楽しみですが、それまでひとまずは、公開されているリードトラックのFOH(Front of the House)を聴いて気分を高めましょう。
という感じで、ただの記事紹介がわりと長くなってしまいました。
ちなみに今回のポスト、本当はフライドバーガー妹こと、俺の妹がこんなにいいSSWなわけがないa.k.a.Eleanor Friedbergerの新譜「Personal Record」を上半期ベストに入れ忘れてしまっていたので、そのことを書こうと思っていたのです。それが、巡り巡ってこんな感じになってしまいました。なので、ここで一応Personal recordは、前作のLast Summerでは抑えめだったソングライティングのバリエーションが開花した、素晴らしいアルバムであると言っておきましょう。現代のPatti Smithか、Joni MItchelか。まだまだ育つ、女35歳。来日も希望してます。(メルボルンのライブに、まさかギター一本抱えて、ひとりで来るとは思いませんでしたよ。フライドバーガーさん。)
ちなみに先日公開された、ニューアルバムの中の一曲She's a Mirrorをフィーチャーしたショートフィルムは、鏡の中から語りかけてくる"彼女"(もうひとりの自分?)に焦点をあてた、メタ的サイコホラーちっくな仕上がりになっています。こちらもぜひ注目です。
(貼り付けが許可されていないので、リンク先で観られます)