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- 郷愁のChapter Music
Posted by : A kind of Lo-Fi
Jul 5, 2013
オーストラリアはメルボルンに、Chapter Musicというインディーレーベルがあります。
ニュージーランドのFlying Nunの影響をたっぷり受け、古臭く、退屈で、でも本当に最高なローファイポップを追求している、愛すべきレコードレーベルです。
ファウンダーのGuy Blackmanが、シド・バレットのファンジンとして発行したChapter24という名前に端を発し、出身地のパースのアングラバンドのカセットコンピのリリースや、ソニックユースのトリビュートテープの制作、そして別のファンジンの発行など、紆余曲折を経て、メルボルンで本格的なレーベル活動をスタート。しかしGuyは2003年前後は日本で暮らしていたようで、レーベルは一時休止。さらに、その際テニスコーツのメンバーとしてバンドに在席していた経験もあるようです。
その後Guyはメルボルンに戻ってまたレーベル活動をスタートさせ、いまに至ります。(そのときのつながりなのか、テニスコーツもレーベル在席しています)。
昨年は、Twerpsというローファイポップバンドが地元のみならず、ニューヨークのUnderwater Peopleからもリリースされて話題になりましたが、良質なバンドはそのほかにもひしめいています。
なので今回は、いくつかのバンドのMVを貼っていきます。
TwerpsはまさにFlying Nunのバンドたちの歴史をなぞるようなローファイポップを鳴らすバンド。ローカルの中では、そのパフォーマンスは群を抜いていました。4回くらい彼らのショーを観ましたが、(Kurt Vileの前座を含め)彼らはまさにライブバンドで、CD音源とはかけはなれたパフォーマンスを披露してくれました。異様に舞台慣れした感じなのもよかったです。(唄はヘロヘロなんですけどね。)Vo.のマーティはいつのまにか髪が長くなっていますが、私が観ていときはいつもキャップ姿で、なんだかつるっとしたおでこといい、役者の濱田岳くんとイメージが重なるなぁ(味があるという意味で)といつも思っていました。…かなり余談ですが。
ちなみにマーティの父は、Paul Kelly and the Dotsというオルタナ、フォーク、スカ、ポップパンクなどの雑食性の音で人気を博したバンドのメンバー。同じくメルボルンを拠点に活動していましたが、音楽性は若干違いますが、影響は多分に受けているでしょう。
つぎの注目は、春にセカンドアルバムのCalender DaysをリリースしたDick Diver。すでに2010年の1stのときから耳の早いリスナーの間では話題になっていました。
オーストラリアの80'sジャングルポップバンドThe Go-BetweensやFlying NunレーベルのThe Cleanからの影響を感じさせるメロディライン。しかし、あくまでシンプルで無機質だけれど繊細な質感を持った曲調が魅力です。フロントマンのAlastairとRupertのヴォーカル以外に、紅一点の女性ドラマーStephのヴォーカルをフィーチャーした曲も1stのころより増えているように感じました。
Beaches(Jerry Leeのじゃなくて)はこれまた最近、2ndとなる素晴らしいローファイサイケ・シューゲイズアルバムをリリースした、女性5人組バンド。Dick Diverと同じく、去年は今年のリリースに向けての期間だったらしく、ライブを観られなかったのが残念。
Geoffrey O'Connorは地元のインディーアイコンともいえるソロアーティストで、(自己)陶酔型ドリーム歌謡ポップを奏でています。細見で小さくて、いかにも自己愛が強そうなたたずまいは、まったくアーティスト性そのものなのですが、メルボルンのシーンでは愛されキャラでした。ソロなだけに、キャラクター性が大事だということを理解していたのでしょう。
こちらも春にデビューEPを出したキャッチ―でポップなメロが特徴のバンドStevens。
音楽性は極めてTwerpsに近いものの、Stevensはよりガレージ・パンクからの影響も感じられるバンドです。
メルボルンという街の雰囲気は、適度にモダンでゆるく、人々が自分たちにあったペースで生きている感じでした。文化が混ざり合っている町ではありますが、嗜好的にはクラシックでトラディショナルなものを好む雰囲気があり、先鋭的なものよりも、古き良きものを好む傾向にあるのではないでしょうか。Chapter Musicは、そんな街の空気を反映しているレーベルだと思います。
ほかにも、完成されたポストパンクサウンドを鳴らすClubfeetや、シューゲイズサイケデュオLove Connection(NYに拠点を移している)、トライバルなエレポップ・ファンク集団NO ZU、エレクトロニカ・インディーポップバンドのI'llsなど、おもしろいバンドを観る機会が多くありました。それらについては、またいつか思い付きで書いていきたいと思います。